Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
「長期目標に事務職への復職とあります。この患者さんは若く、早期の復職を希望されていますが、中期目標にADL自立としか挙げられていません。長期目標に復職を挙げているなら、業務内容についての具体的な評価が必要なのではないでしょうか?」
その質問をして下さったのは確か、脳血管障害系のチームのメンバーである男性作業療法士の先生。
長谷川さんの“おにぎり”食べたい発言からあたしの注目はADL(日常関連活動)へ向いていた。
確かに長期目標に復職を挙げているのならば、質問者の先生がおっしゃった通り、それについての具体的な評価は必要だった。
『先生のおっしゃる通りです。今後はそのような視点でも・・・評価できるようにしていきたいです。』
だからあたしは質問者の投げかけに、それを肯定することしかできなかった。
その自分の応答に対し、頑張って下さいとの声援を頂き、あたしは声を潜めながらひと息をついた。
「はい、質問いいですか?」
「どうぞ。」
「筋電図、神経伝導速度も測定されて、それも踏まえて腕神経叢損傷下位不全型との診断になったようですが、具体的な数値と所見はどんな感じでしたか?」
確かこの先生は手の外科チームの松浦・岡崎のツートップのちょっと下の年代のチームメンバーである女性作業療法士さん
自分が作成したこの症例でのレジュメ
それは発表用レポートをA3サイズ用紙1枚にまとめたものであり、その用紙に収まる程度の内容にしなくてはならない
たくさんの情報を書き込みすぎると、読んで下さる人が見づらくなり伝えたいことがそこに埋もれてしまう恐れがある
読む人の読みやすさを優先すると、そこに書き込める情報量が少なくなり、それによって伝えられないことが出てくる恐れがある
あたしは、本当に伝えたいことをしっかり伝えたいという想いから後者を優先して、このレジュメ上で臨床検査所見の詳しいデータや所見の記載を省略させてしまった
省略した分、口頭で説明できるようにしておかなきゃいけなかったんだ
「申し訳ありません。情報収集不足にて今ここでお伝えすることが・・・できません。」
自分がやるべきことがやれていなかったと充分に反省しなきゃいけない案件だ
「そういう情報も今後は求められると思いますので、準備をしておいたほうがいいと思います。」
『はい・・・ありがとう・・ございます。』
自分の不甲斐なさを痛感して泣きそうになったけれど、今後に向けての助言をして下さっている先生に失礼だと思って泣くのをぐっと堪えた。