Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
その後も、評価に基づいた統合解釈について、自分とは異なった解釈をされて指摘して下さった先生や、看護師からの情報収集の不足を指摘して下さる先生など、どれもみな、自分に足りていなかった評価や考え方を指南して下さる質問が続いた。
それとともに、どんどん積み重なってくる自分の不甲斐なさ
苦しい
もう逃げ出したい
臨床現場にはこういう苦しさもあるんだ
今にも自分の外に溢れ出しそうなマイナス思考を止めてくれたのは
「まだまだ質問があるかと思われますが、終了時間となりましたので、お質問のある方は直接本人へお伝え下さい。本日は症例発表会へのご参加、ご協力ありがとうございました。」
一切ブレのないアナウンスでこの会の終了を告げた岡崎先生だった。
その後は、質問内容を紙に書いて、それに対するアドバイスまでも書き入れて渡して下さる先生や直接声をかけて下さって質問しながら、これからも頑張ってねと励まして下さる先生などへ、あたしはひとつひとつ丁寧に応対した。
ひとつでも多くのことを吸収しようと必死だった。
でもそんな頑張りはいつまでも続くはずがなく、それも見透かしてくれたらしい岡崎先生の
「真緒、最後のフィードバックの時間だ。」
あたしを呼ぶ声で、あたしが頑張り続けなくてはいけない時間を終わらせてくれた。
「実習、お疲れ様でした。」
『ありがとうございました。』
「実習の結果は81点。合格です。」
『・・・ほんとですか?症例発表、あんなにも出来が悪かったのに。』
「でも合格です。」
岡崎先生によって淡々と進む実習の最終フィードバック。
面倒臭いことを嫌う彼らしいと言えばそうかもしれない
でも今は、
彼の表情
彼の視線
彼の声
その声の抑揚
それらから、彼は敢えて淡々とフィードバックを進めようとしているようにも見える
実習初日の、やる気のなさそうな彼の挨拶・態度とも違う今の彼
「これから最終学年の4年生になると思いますが、臨床実習、国家試験と乗り越えなければならない壁がたくさんありますが、これからも頑張って下さい。」
最後の挨拶を終えた岡崎先生にはいつものフィードバックの時のようなフランクな声かけはなく、彼らしい般若顔もなかった。
明日からは、お前と俺は実習生と指導者という関係もすべてなくなる
岡崎先生は無言でそう語っているような空気を醸し出している
そんな彼と振り返ることはもうないだろう
この実習で
苦しかったこと
楽しかったこと
哀しかったこと
嬉しかったこと
彼と・・・岡崎先生と過ごした時間
そして
彼を好きになったこと
もうこれらを振り返る時間も、機会もあたしにはない
彼にとってあたしはただの臨床実習生
あたしにとって彼はただの臨床実習指導者だから
『・・・本当にありがとうございました。お世話になりました。』
最後まで実習指導者だった彼からの最後の言葉をしっかりと胸に刻み込み、あたしは彼に一礼をして、彼の顔を見ないまま作業療法室を後にした。
彼の顔を見たら、スキと言ってしまいそうだったから。
こうやってあたしの初めての臨床実習は
喜怒哀楽なんて存在しない、無機質な実習最終フィードバックにより
自分が思っていたよりもあっさりと幕を閉じた。