Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!


『長谷川さん!!!!』

「見送りに来た。今日、高山に帰るんだろ?」

『はいそうです。わざわざ、ありがとうございます・・・』

「岡崎先生に合格もらったまおに、伝えたいことがあってさ!」

『あたしに・・・?』


玄関を出る時には、今からは寮へ戻り、部屋の片づけをして高山へ向かう予定の心づもりだった。
そんなあたしに想定外の、嬉しい足止め。
だって最初はあたしの存在を受け入れてくれようとしなかった長谷川さんからの足止めだからだ。


「これ、高山へ帰る道中で食べな。」

1才しか年齢が違わないのに、まるでお兄さんのような口ぶりの長谷川さんから差し出されたおにぎり。

“マヨネーズたっぷりツナおにぎり”と書かれたおにぎり。


『コレ・・・』

「まおと俺のおにぎりって言ったらコレだろ?」

『あはっ、そうですね。でも、患者さんからの頂き物は受け取れない決まりがあって・・・』

「食ってしまえば証拠隠滅だろっ?ほらっ、遠慮せずに!」


長谷川さんは、ニカッと笑って、腕神経叢損傷を受傷した右腕ではない、元気な左腕でツナマヨをあたしの手に押し付ける。

彼の、強引で心のこもったそのツナマヨを断ることができなかったあたしはそっと手のひらを上に向けてそれを受け取った。

その様子を見届けて長谷川さんはほっとした顔をする。


「まお、俺・・・」



何か言いたげな声色。

長谷川さんとのリハビリ最終日には“お世話になりました”なんて他人行儀な顔だった。
だから、あたしに言いたいことがありそうな今の彼の様子に、あたしは密に驚いている。

『はい、それで?』


だから彼の言葉の続きを催促。
ツナマヨおにぎり食べて証拠隠滅という、やってはいけないことを強要され、証拠隠滅の共犯者となった今のあたしも、ちょっと強引にそれを催促する。


「まおが俺の担当に加わった時、なんで学生が俺の担当になるんだ・・そう思って、イライラした。」

知ってる
岡崎先生にそう訴えているとこ、盗み聞きしてたもん、あたし


「で、岡崎先生に説得されて、いやいや引き受けることにした」


それも知ってる
評価させて頂くことになった時、本当に嫌そうだったもん
あたしがなかなか近付けないくらい


「でも、真緒がドジしながらも、できないことをどうやったらできるようになるかをひたすら考えながら一生懸命に俺に向き合ってくれていることを日々感じていくうちに、この人と一緒にリハビリできて良かった・・・そう思えたんだ・・・」


それは・・・知らなかった
そんな風にあたしのことを想っていてくれたなんて・・
いつも、あたしのドジにクールにツッコミをいれたりして、
そんな素振り、見せたことなんてなかったのに


「だから・・・俺は・・・」

「スキとか言うなよ。」

「はぁ?」

『えっ?』


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