Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
「真緒さんは、聞きたいよね・・・伊織の異変の始まり・・とか・・・」
『異変の始まり・・・って・・・岡崎先生、どこか悪いんですか?』
いつもジェントルマンな松浦先生にしては珍しく、どこか意地悪な笑みを浮かべている。
彼が酒豪でお酒に呑まれる人ではないってわかっていても、本当に酔っぱらっているのかもしれないと思ってしまうようなその笑み。
「確か、2年前だっけな~。」
その笑みを浮かべながら、再会したばかりの岡崎先生の口からも聞こえた“2年前”というキーワードのせいで、松浦先生曰く彼の余計な話が、
『2年前?!何があったんですか?岡崎先生に!!!!』
凄く聞いておきたい大切な話へと置き替わってしまった。
“長くなるけどいい?!と、またもや意地悪な笑みを浮かべた松浦先生は、あたしのyesの返事を待たないうちに口を開く。
2年前の冬
岐阜濃飛医療大学で開催された次年度の臨床実習指導者会議に参加するために松浦先生は岡崎先生と一緒に高山へ来ていた
その際に高山駅前の横断歩道の傍で、一部がアイスバーンになっていた場所で足をとられて転倒した少年が泣いていたそうだ
膝を擦りむいて酷く出血していたその少年の応急手当をしようと松浦先生と岡崎先生が彼のところに駆け寄ろうとした時に、彼らよりも先に若い女性が駆け寄って、手際良く応急処置をしてからその少年を抱きしめたとのこと
もしかして姉弟かもと思って、松浦先生がその場を離れようとしても岡崎先生は彼女らを見つめ続けていて動こうとしなかったそうだ
「その時、伊織が動こうとしなかったのは、少年を助けたはずの、その女性の指の異変を見抜いたからなんだ・・・。」
松浦先生はそう言いながら、彼はあたしの右手をじっと凝視し、しばらくしてから、ゆっくりと頷いた。
「少年を助けようとして、関節が強く反るぐらいの力で右手のひらを地面に着いたりしなかった?・・・その時の真緒さんは。」
『松浦先生・・・』