Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
彼に手を引かれて到着したのは、高山市内に古くからある格式の高いシティーホテル。
そしてたった今、彼がドアの鍵を開けて入った部屋は淡いアイボリーカラーの光を放つルームライトだけが灯してあるやや広めなツインルーム。
今日の夜、あたしと一緒にいることを選んだ岡崎先生。
だからホテルの部屋に入ったら、もう、すぐにでもあたしを求める
そう思ってた。
でも、岡崎先生はフロントで渡された明朝のミールクーポンを木目調のデスクの上に無造作に置き、ネクタイを緩め、窓のほうへ移動する。
彼はそこで立ったまま今度はYシャツのボタン上2つを外し、窓の外の夜空に浮かぶ下弦が少しだけ欠けている黄金色の月をじっと眺めている。
好きな人と過ごす初めての夜
今から自分はどうなってしまうのかわからず、自分でもガチガチに緊張しているのがわかる
だから、今、目の前で月をじっと眺めている彼には肩透かしに合わされた気分。
それでも、月明かりが背の高い彼をそっと照らしていて、目を閉じた横顔がとてもキレイで・・・改めてこの人の隣にいる今がとても尊いと思わずにはいられなかった。
「真緒・・・本当にいいのか?」
ようやく目を開け、あたしのほうを見た彼。
瞳の奥を覗かれている。
あたしの本当の心の中の想いを見抜こうとしているようなその瞳は、彼がまだ拭いきれていない葛藤と背中合わせなものだろう
彼の拭いきれていない葛藤
それは、多分、彼の中では、久しぶりに再会して想いが通じ合ったばかりなのに、すぐにあたしを欲しがるということは節操がないという葛藤
彼のこの葛藤から彼を抜け出させてあげるのは、
たったひとり
あたしだけ・・・
『あたしが・・・岡崎先生を求めてる。』
だから強い気持ちで彼を求めてる
『今、ここにいるあたしは絶対に間違えません。』
だからちゃんと伝える
彼があたしにしてくれていたように
ちゃんと伝える
自分が見て聞いて触って感じたものを
自分で選ぶ
それができるようになったことを
それを教えてくれたたったひとりの彼に・・・
『だから、めいいっぱい抱きしめてください。』
「・・・覚悟・・・できたみたいだな。真緒も・・・俺も・・・」
あたしの覚悟が充分に伝わったらしい彼はあたしの両頬にその長い指を当て、唇をすくい上げるようにあたしの顔を上げて、そっとキスをした。