Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
そして、岡崎先生が名古屋へ戻るために乗る特急電車が停車する高山駅まで一緒に歩き始めた。
自宅から高山駅までの道。
午前8時過ぎ
観光客らしき人達と何人もすれ違う。
彼らはおそらく宮川沿いで朝8時から営業しているお店へ向かう人。
高山駅に向かうあたし達はその人達の流れに逆らうように歩く。
「赤い橋、風情あるよな。」
『中橋って言うんです。春は桜、秋は紅葉とのコントラストが本当にきれいで・・・』
「名古屋はもうすぐ桜が咲くけれど、高山はまだみたいだな。」
『ええ、高山の桜は4月中旬ってとこですからね。それに江名子川の桜もあたしのお気に入りなんです。桜の時期は夜、ライトアップして本当に幻想的で。』
「高山、本当に好きなんだな・・真緒は。」
『はい・・生まれも育ちも高山ですから!・・・美味しいものがいっぱいあって、高山の人は気前もいいですし、自分が行きたい大学も高山市内にあって・・・高山から出ようという気が起こらないんです。』
「・・・そうか・・・」
自分の大好きな場所の話でつい気持ちが高揚していたあたしの隣で、岡崎先生の声のトーンが低い。
『すみません・・なんか喋りすぎました。』
「いや、そうじゃないんだ・・・」
何か考え込んでいるような彼。
どうかしました?って深堀りしてもいいのか迷っている間にあたし達は高山駅に到着してしまった。
もちろん、改札口でバイバイして今日という日を終えることなんかしたくないあたしは、入場券を購入して、彼と一緒にホームへ入る。
「特急名古屋行き、9時2分・・・。」
岡崎先生はホームの壁にある電光掲示板を見てから自分の腕時計で時刻を確認している。
スーツ、そしてそれに似合うチタン素材の腕時計に目をやる伏し目気味な彼も
好きな人フィルターのせいかもしれないけどカッコいい・・・
「あと、20分・・か。」
『あと、20分?』
「ああ、今、8時40分だからな。」
スーツ姿に見惚れているあたしに、真面目な顔で今の時刻を告げる彼。
『20分しかない・・の・・?岡崎先生との時間。』
「どうした?真緒、そんなに焦って・・・」
「だって、あと20分って・・・」