Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!



さっき岡崎先生の声のトーンが下がったり、考え込んでいた原因

それが何かわからないまま残り20分なんて
20分経ったら岡崎先生はここからいなくなるなんて
急にリアルが降りかかってきて
どうしていいのかわからなくて目からは勝手に涙が出る

泣き顔で離れ離れになるなんて、岡崎先生に心配をかけちゃう
名古屋と高山、簡単に行き来できる距離じゃない
だから泣いたら絶対にダメなのに・・・




「真緒、左手を出して。」

『・・・は、はい・・・』


泣くのを堪えるのに精いっぱいなあたしは、彼が自分の左手を差し出して欲しい理由はなんだろう?なんて考える余裕はない。
だから促されるまま、左手を彼の目の前に差し出した。

スプリント素材であるプラスチックで作られた彼手作りの指輪を嵌めたままのあたしの左手。
まだ寒い中を歩いてきたこともあってか指先が氷のように冷たい。
そのあたしの手を自分よりも少し温かい大きな手の彼がそっと掴む。


「・・・離れがたいな・・・」


彼のその言葉と左手の指先と手のひらから伝わってくる彼の体温のせいで、ずっと堪えていた涙が流れてしまった。

たった1日だけど
彼の温かさを知ってしまった今、
彼がいない空間に戻るなんてもう考えられない


『次会う約束もしていないのに・・・特急が発車するまでにもう20分もないのに。』


急に押し寄せる不安の波。
遠距離恋愛っていうワードがリアルになった今。

『なんで、指輪、外すんですか?』

あたしの左手に彼によって嵌められたままだった指輪が
その彼によって外されてしまった。



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