Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
『えっ、だって・・・』
1年前の実習最終日を必死に想い出しているあたしの首元に伸びてきた彼の指。
それがあたしの首にかかっているペンダントのチェーンをすうっと引っ張る。
その直後にシャラっというチェーンを滑る音を立てて胸元に現れたのは衣服に隠れていたスワンネックスプリント。
「それに刻まれている文字、気が付いてる?1年前に真緒に渡したんだけど。」
『・・はい。見ましたけど、筋肉や関節の略語ですか?』
「・・・俺はそこまで仕事人間じゃないよ。」
と言いながら渡されたのは、ついさっき彼によって外された彼お手製の指輪。
『コレが何か・・・?』
「見比べてくるとわかるかもな・・」
『見比べる・・・見比べる・・・・』
あたしは左手に彼から渡された指輪を持ったまま、右手で胸元にぶら下がったままのスワンネックスプリントを手に取り見比べた。
同じ桜の花びら模様のそれら
スワンネックスプリントは指輪よりも少し大きい
1年間、あたしの胸元で辛いときしんどい時に励みにしてきたそれは、指輪よりも少し色褪せている
絵里奈が見つけてくれた手彫りのアルファベット文字もスプリントの内側に消えることなくちゃんと残っている
“ M, I LY forever “
何度見ても、謎で、時には MILYのYはK の間違いなんじゃ・・・MILKでしょ?牛乳でしょ?と思ったりもして
foreverも謎のまま・・・
指輪とスプリントを見比べてみろって
もしかして、この文字が指輪にも彫られているのかも
『見比べる・・・指輪は・・・』
岡崎先生が作ってくれていた指輪
それは細長く切られた熱可塑性プラスチックが数本編み込まれている複雑な構造で、スプリントみたいにすんなりと手彫りの文字を見つけられない
“間もなく1番線に、特急名古屋行きが到着します。停車駅は・・・”
突然聞こえてきた駅員さんのアナウンスで、本当にもう時間がないことを自覚してしまって集中力が途切れそうになる
岡崎先生はこういう時こそ簡単に答えを教えてはくれない
それは実習中の経験から学んだこと
だから、教えて下さいって彼に頼むのは時間の無駄
自分で文字を探すしかない
『・・文字・・・アルファベット・・・』
“ガタン・・・ゴトン・・・ガタン・・・ゴトン・・・キキー・・・・・・プシュー”
「電車来たぞ~。発車まであと3分。早く見つけないと、俺を堪能しないまま、俺は帰ってしまうぞ~。」