Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
『あっ!!!! 嘘!!!!うそ~!!!』
さっきまでの鼻声からクリアな声に代わって状況がなんとなく見えてきた瞬間
あたしは声を上げずにはいられなかった。
さっきあたしに電話の子機を渡してくれた女性スタッフが心配そうにあたしの様子を窺っていたので、大丈夫の合図を送ってから、人気のない廊下へ出た。
『もしもし!!!』
「作業療法士の神林先生、御無沙汰しております。私、名古屋南桜総合病院の作業療法士の・・・節操なし度90%の岡崎と申します。」
『・・・節操なし男度・・・100%・・の岡崎先生・・・』
「おい!勝手に10%増量するなよ。」
『た、た、大変御無沙汰しております。』
お互いに忙しかったとはいえ、1か月ぶりの、まさかの彼の声、しかも病院の公用電話から聞こえてくるなんて思ってもいなかったから、変な緊張してしまう
「久しぶりだな、真緒。」
『・・・久しぶりどころか、どうしたんですか?病院にお電話を下さるなんて・・・』
「そろそろ、真緒が俺に会いたくなる頃かと思ってな。それになんで連絡してこないんだよ。」
『・・・・・・』
連絡してこない?
だって、連絡先交換してないじゃない・・・
仕事で壁にぶつかりまくっている今、
甘えちゃいけない
そう思って敢えて、岡崎先生のことを考えないようにしてた
連絡先も知らないし・・・って自らに言い聞かせて
「そろそろ、甘えろよ・・・聞いてやるよ・・お前の、いっぱいいっぱいになってどうしようもなくなっている話をな。」
『・・・・・』
さすがあたしの実習指導教官だった人
作業療法士として従事し始めて壁にぶつかりまくりのあたしのことが手に取るようにわかるみたい
「たっぷり、たっぷり甘やかしてやるから。」
『・・・・・・』
会いたい
いっぱいいっぱいになってどうしようもない
たっぷりたっぷり甘やかしてほしい
誰が聞いているかわからない病院の公用電話では、そんなことを口にできない
だからあたしは
『岡崎先生。このお電話口ではちょっと・・申し訳ありませんが、そのような案件にお返事することはできないのですが・・・』
社会人として恥ずかしくない電話応対口調で、本当は彼に伝えたいことを口にするのを我慢した。