Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
『ちょっと待てって言われても・・・いつまで待てばいいんだろう?』
ここから離れてしまってからなかなか音沙汰のない彼。
脱衣所でやることもないあたしは、もう一度鏡を見る。
『この格好でも・・・何とも思われないんだな・・・あたし。』
洗面台の鏡の前
前屈みで膝に両手を当てて、上目遣いで上を見るという自称グラビアお姉さんポーズをとってみても、胸が小さめで背の低いあたしはセクシーとは程遠いような気がする
『リアル難攻不落・・・初めてのエッチが奇跡としか思えない・・・かも・・』
自分の色気のなさにガックリと肩を落として立っていたところに、脱衣所のドアを弱々しく叩く音が聞こえた。
「真緒?」
脱衣所内のあたしを心配しているような、彼の声も珍しく弱々しい。
『は、はい・・・』
返事をしたら、少しだけドアが開いた。
そのドアの隙間から姿を現したのは彼の顔ではなく、Tシャツとジャージらしき衣服を持った彼の腕。
「ルームウエア代わりになるかわからないけど、良かったら使え。」
『あ、ありがとうございます。』
ドア超しに聞こえてくるありがたい声に返事をしたら、すぐさまドアは閉められた。
下着だけはセクシーな今のあたし
いわゆる勝負下着な格好で、いつエッチなことが始まってもおかしくない状況でも、視界に入れてもらえないと、そんな状況は全くの白紙状態
ドア越しの衣服のやり取りは本来ならありがたいのに
ドアをしっかりと開けて欲しかったなんて
こういう時はどうするのが正しいのかなんて
そんなことを思うなんて
『学校の勉強では教えてもらえなかったな・・・エッチなお作法とかは・・・』
過去の勉強一筋だったあたしが今のあたしを見たら、別人かと思ってしまいそうだ
でもあたしのこういう性格を彼は見抜いているのだろうか?
『・・・熱湯3分・・?』
『湯切り上等って・・・・カップ焼きそば?! 』
彼からお借りして着ているぶかぶかデカTシャツに書かれていたその文言。
毛筆で力強く書かれているそれ。
しかも湯切り上等が朱色で、書道の先生が添削したみたいなタッチ。
エッチなお作法がわからなくてヘコんでいたあたしにそれ以上のおかしな刺激を与えてくれて・・・あたしじゃどうしようもできそうもなかったそのヘコみが少しなだらかになった。
「Tシャツ、熱湯3分、液体スープは後から・・ってやつもあるぞ。」
『えっ?もしかして、岡崎先生自作Tシャツですか?』
「まさか・・・景品だよ、病院の忘年会の・・・」
『もう1枚の、液体スープは後からTシャツ・・・着て欲しい!!!! ラーメンとカップ焼きそば、どっちが見た目のパワーがあるか知りたいです!』
「は?なんだよそれ・・」
着替えた後のリビングで笑いながらそうツッコんだ彼。
これもあたしの好きな彼で、まだ少し残っていたあたしのヘコみは彼のそのツッコみで真っ平になった。
しょ~がね~な、リビングで待ってろと呟きながら、別室へ向かった彼。
数分後、戻ってきた彼の胸元にはあたしが今着ているTシャツよりも明らかに筆圧が高そうなラーメンの作り方文言が書かれていて。
そのTシャツを着て、ボディビルダーがよくやる決めポーズをとるおふざけをした彼に思わず笑ってしまった。