Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
一緒に過ごしたこの2日間で
ふざけあいながら歩いたり
手術室で真摯に患者さんに向き合ったり
大人のおしゃれに変身したり
美味しいものを食べたり
脱衣所の鏡で目と目が合ってなんだか気まずい空気になったり
新しい朝を温かい同じベッドで迎えたり
お互いを深く甘く求め合ったり
岡崎先生とあたしがちゃんと恋人関係になったのを実感していた
今、間違いなくあたしにとって大切な人は岡崎先生なのに
それなのに、今じゃないなんて・・・
「俺は、真緒にとって、これからずっと・・・になる。そうなるためには俺ひとりの努力では無理だ・・・真緒の努力も必要。」
あたしにとって、岡崎先生は“これからずっと・・・になる”
17時という社会人には無茶な休日の門限
名古屋―高山間という遠距離恋愛
それに簡単にくじけそうになっているあたしに
彼のその言葉は背中を押してくれる
『岡崎先生にとっても、あたしは・・・これからずっと、ずっと、大切な人という存在になりたいです。だから、門限を守れるように逆算します。』
「よくできました。お~けい!」
昨日の夕方に引き続いて聞けた、彼の“お~けい”
彼の元教え子であるあたしは、それがやっぱり嬉しすぎて彼を見上げると
彼はご褒美のキスをたくさんくれた。
「あ~しまった。真緒をベッドの中にまだこのまま引き留めておきたくなってきた。」
『えっ?』
「早く俺から逃げろ、まお。でなきゃ、お前は今日中に高山に帰れなくなるぞ。」
『・・・それはマズイですね・・・シャワー、先にお借りします。』
あたしは、ベッドの中でくの字に丸まってしまった岡崎先生を置き去りにして彼が言う通り、浴室へ逃げ込んだ。
そして、シャワーを浴びて着替えた後にリビングへ向かうと、そこから香ばしい匂いがしてきた。
リビングのドアを開けると、Tシャツにジャージ姿の岡崎先生がダイニングテーブルの上にお皿を運んでいる。
「真緒、さすがに腹減ったろ?」
『すごくいいにおいです~。』
「冷蔵庫の中にあったものだから、こんなものしか作れないけど、良かったら食え。」
Tシャツにハーフパンツのジャージ姿でお皿を軽く持ち上げて手招きをする岡崎先生。
しかも、眉間に皺なしで口角も上がっている。
ちょっとだけ寝ぐせがついているところも珍しく隙あり。
病院でハンドセラピィをしている時の、誰も寄せ付けないようなオーラとは180度異なる、穏やかでプライベート感ダダ漏れな今の彼。
そんな彼にドキドキしながらも、
『もしかして野沢菜チャーハン・・・ですか?!』
「そう。野沢菜だけはうちの冷蔵庫に絶対いるからな。お茶漬けと迷ったけれど、とりあえずチャーハンにしてみた。」
『野沢菜とは・・さすが長野出身ですね!野沢菜お茶漬けも食べたいです!』
「はいはい。」
家族と同居しているあたしがもし、他人とふたり暮らしをするなら、肩肘を張らないこういう人が一緒にいる人なんだろうなと、ふと思った。