Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
『そろそろホームへ向かわないと・・・』
コンビニでも喫茶店でもレストランでも食べることができない、岡崎先生お手製の野沢菜チャーハンを美味しくご馳走になったあたしは、自分の鞄を持ってくれている岡崎先生と一緒に名古屋駅へ着いた。
両親へのお土産をたくさん買い込んで改札口に向かう。
改札口で岡崎先生とお別れになるかと思っていたら、彼はさっさと入場券切符を購入し、大勢の人の流れに逆らうことなくすんなりと改札口を通った。
「ちゃんと逆算できているみたいだな。」
『はい。岡崎先生の教え子ですから。』
階段を昇りながらも会話をする。
1分1秒も惜しい今だから。
「教え子とか・・・今、その言葉を聞かされると、昨日の夜の自分がイケナイことをしたように思えるから、それ言うなよ。」
『教官、イケナイことをもっと教えて下さい~。酸いも甘いも~。』
ホームの乗車口に到着してもまだ会話する。
高山駅で岡崎先生を見送った時みたいに
焦ってこの時間を過ごすのは嫌
泣いてしまいそうになるのも嫌
「だから教官とか言うなって・・・でも、その言葉、後悔するなよ。覚悟しとけ。」
『覚悟上等!!』
だからできるだけ笑いあえるように努力する。
多分、岡崎先生もそんなあたしの努力に気付いてる。
「あ~俺、充電し忘れた。」
その証拠がコレ。
しばらくの別れを惜しむような雰囲気にしないよう仕向けてる。
楽しかったとか嬉しかったとか
寂しいとか
そんな想いがこもった形容詞ではなく、“充電し忘れ”という、感動一切なしの日常ありふれている動詞を口にすることで。
『えっ?、携帯、相変わらずしてなかったんですか?充電。』
「携帯は真緒に注意されてからちゃんと充電してある。緊急連絡用に・・・真緒は緊急じゃなくてもいいんだけどな・・・だから、真緒も携帯出せ。」
そんな彼はデニムのポケットからおもむろにスマホを取り出し、あたしの前に差し出す。
画面に映っているのはLINE画面。
『あっ、ちょうど良かった!おともだちになりましょう・・岡崎先生。』
「恋人からおともだちに格下げするのかよ。俺のこと。」
『こ、こ、恋人のまま、おともだちになるんです!LINEの!』
彼の連絡先はまだ彼の携帯電話番号しか知らなかったあたし。
しかも岡崎先生は電話番号検索でおともだち追加されないように設定している様子。
でも無事にお互いにLINEのおともだちに追加され、多忙を極めているあたし達の連絡ツールが増えて安堵する。
ただ、LINEのおともだち追加を催促されていたからおともだちになろうと言ったのに、彼の口から返ってきた、“恋人”という言葉は、ドキドキ違和感あり
去年までは“ただの実習生”と彼に思われていると感じていたから
「だったら、おともだちになってから、恋人に戻って充電させろ。昨日、今日と真緒にはとことん充電させてもらったけれど、まだ足りないんだ。」