Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!


おともだちになったけれど、恋人である岡崎先生の“まだ足りない”
嬉しいけれど、特急に乗ろうとしているあたしが彼に何をしてあげれば足りるんだろう?

ハグ?
キス?
鼻の甘噛み?
それとも、服を着たままこっそり・・・


『は、ハレンチ!!!!』

「あ~。なんでわかるんだ?」

『えっ?ここで?・・・ヤるんですか?』

「は?さすがに俺でもそれは・・・でも、さすが、俺の恋人だな。はい、これ。」

まだ閉じていない特急のドア開閉部で、突如手渡されたのは、高山から持ってきた時よりも明らかに重量感のある元純夏ちゃん特製お弁当。


『お弁当・・ですか?伊織クン特製弁当?!』

「ああ・・・俺特製のな。純夏ちゃんに渡して。俺はこれだけじゃまだ足りないって。」

『あ~、さっきの“まだ足りない”ってお弁当のことですか・・・でも、これだけじゃ・・・って・・・』

「電車の中で勝手に開けるなよ。開けずにちゃんと純夏ちゃんに渡せよ・・・わかってるよな。弁当の中身。真緒が運んできたんだしな。」


お弁当の中身
あたしは運んできたのは、まさかの精力ドリンク&コンドーム
まだ、足りない・・・
これだけじゃ、まだ足りない・・・?!


『ええ~っ?! まさか、純夏ちゃんに追加催促するんですか?コンド』

ちゅっ!

「ハレンチはまおちゃんのほうです~!!ここをどこだと思っているんですか~? ・・・まおのばかっ。」


あたしの言葉の続きを甘いキスで塞いでから、清純派お嬢様気取りのち憎まれ口を叩いてみせた岡崎先生。

悩殺&秒殺キスで仕返ししてやろうとした瞬間、特急のドアが閉まってしまった。
その瞬間、岡崎先生は勝ち誇った笑みを浮かべ、その数秒後、彼はあたしの視界から消えた。

正確には特急が発車して、あたしが岡崎先生の視界から消えたんだけど。


『ちょっと~ちょっと~・・・また、こんな別れ方?!』


高山駅での彼との別れ方は“まお~、今度こそお尻のかわいいホクロ、見せろよ~”だった
そして今、名古屋駅での彼との別れ方は、“ハレンチはまおちゃんのほうです~!!!”

『別れ際は、エッチなことしかないのか?! 般若岡崎は!!!』


怒りながらも笑える
だから寂しいって泣かなくても済む
彼がたっぷりと甘やかしてくれた時間があるから
頑張れる

あたしが実習生だった頃、岡崎先生にもう会えなくなると切なくなりながら乗ったこの高山行きの特急

『明日からまた地獄が始まる~!!! FIM(機能的自立度評価法)の点数を爆上げするリハビリ、するんだから! なんてったって、365日フル稼働な回復期リハビリなんだから、とことんやるっ!・・・でも患者さんに無理させない範囲で。』

それが今では、岡崎先生に次また会える時まで、自分ができることを精一杯やろうなんて思える乗り物になった





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