Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
【Next step study その5:物理的距離と心理的距離の間で・・・】



【Next step study 5:物理的距離と心理的距離の間で・・・】


『も~う。また、夜中まで発表スライドを作ってたな~。伊織センセイは!』



作業療法士3年生になったあたしはもうすぐ25才。
元鬼指導教官だった岡崎先生は現在31才。8月の誕生日がくると32才。

一通りの回復期リハビリの仕事を覚えつつあるあたしに対して、
ハンドセラピイの世界でバリバリ仕事をこなす岡崎先生は
土曜日である今日も午前中は仕事。

午後からは会える予定だったけれど、急遽、森村コールにて呼び出しをくらったらしく、合鍵を使って部屋で待っていてと言われた。


『しかも、英文抄読を同時進行って、どんだけ勉強スキなの?』


彼に言われた通り、合鍵で彼の部屋に入ると、パソコンの電源が入ったまま、英語文献も3冊開いたまま。
おまけにカップ麺の空き容器も置いたまま。
ベッドで寝ないでデスクで寝落ちしたような空気が漂っている。


『英語文献は下手に片付けられないな~・・でもカップ麺はいいよね?スープしか残ってないし。』


そう言いながらあたしが台所へカップ麺の空き容器を運んでいると、この部屋のチャイムが鳴った。
さすがに自分の家ではないので、ドアの外を覗く穴からドアの向こう側の様子を窺う。

そこには女性の姿あり。
しかもロングの黒髪の若そうな女性。

宅配業者さん?
速達を運ぶ郵便屋さん?
ピザ配達スタッフ?
新聞配達の集金スタッフ?
保険外交員の人?
回覧板を届けにきた隣に住む若いお姉さん?

ドアの向こう側にいる人がどんな人かを静かに考える。


すると、今度はドアをドンドン叩く音がして。

「岡崎先生!!!・・・伊織先生!!!!」

彼を呼ぶ女性の声もした。
しかもちょっと泣いている感じもする。

『知り合い?伊織さんの・・・』


今、あたしがいるのは、岡崎先生の自宅マンション
病院に近くにあるマンションだけど病院寮ではない
ここを知っているのは、多分、彼に近い関係の人だけだと思う
プライベートの時間まで他人に踏み入られたくないらしい
(真緒はいいんだって言ってくれているけれど)

『しかも、なんか急いでいるみたいだし・・・女性だから、大丈夫だよね・・・』


あたしはドアの向こう側の女性のことを心配しながらドアを開けた。

その瞬間、

「伊織せんせい!!! あたし・・・・もう・・」

抱きつかれた。
明らかに泣き声の女性に。
しかも、岡崎先生のことを伊織せんせい呼びしている女性に・・・・





< 201 / 226 >

この作品をシェア

pagetop