Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
『あの・・・』
「あっ・・・女の人・・・伊織せんせいじゃない・・・」
あたしが名古屋南桜総合病院で実習していた時。
岡崎先生のことを伊織と呼ぶのは松浦先生しかいなかった。
今、目の前にいる女性はあたしが実習をしている時、リハビリ部門内では見たことがない。
雰囲気はあたしより若い気がする。
しかも、見ているこっちが目を逸らしたくなるぐらい体のラインがはっきりとわかるような服装。
なんであなたがここにいるの?
しかも、伊織せんせいって彼を苗字ではなく名前で呼ぶのはなぜ?
そう聞きたかった
でも、岡崎先生とどういう関係かなんて簡単に聞いてはいけない
そう思って黙っていたのに
「あの~、伊織せんせいとどういうご関係か知りませんけど、今日は実習生のあたしが約束しているんで・・・伊織せんせいとここで。」
一方的に睨まれた。
あたしとは知り合いでもなさそうなのに。
『・・・・・・・・・・』
約束ならあたしもしていますよ
あたしなんか2か月前から今日会おうっていう約束を
そう言い吐き捨てたかった
でも、そんなことできない
実習生であるらしい彼女が岡崎先生と約束している
実習の大変さはあたしも痛いほどよくわかっているから
その邪魔をするわけにはいかない
「なので、今日はお引き取りください!」
「若菜!!!」
目の前の彼女があたしにそう啖呵を切った瞬間、彼女の背後から聞こえた声。
それはあたしの大切な人が女性の名前を呼び捨てする声だった。
しかも、“わかな”という・・・苗字ではない、下の名前で。
その後に聞こえてきた声もあたしの大切な人の声だけど
「・・・・真緒・・・・・」
あたしの実習最終日に聞いて以来、今まで耳にしていなかった
あたしが切なくなる声。
『・・・・・・・・』
なんでそんな切ない声であたしを呼ぶの?
なんで目の前の女性実習生を下の名前で呼ぶの?
なんで目の前の女性実習生が岡崎先生の自宅を知っているの?
なんで若菜さんが岡崎先生と今日、約束しているの?
それらの疑問を彼に聞きたかった
でもあまりにも彼の、あたしを呼ぶ声が切なすぎて
聞いてはいけない
そんな気がした
『すみません・・・用事を・・・想い出したので失礼します・・・』