Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!


日詠先生に八つ当たりするようなことをしたあたしにも、穏やかな顔でそう言い切った彼。


それだけではなく、

「伶菜は手をちゃんと治して、今は臨床心理士の資格を得るために大学院に通っているらしい・・・。」

傍にいないらしい伶菜さんの現在の動向まで教えて下さった。


『そうなんですね・・・・』


あたしが知っているレイナさんは
松浦先生や岡崎先生と一緒に必死にハンドセラピイを行っていた姿が
かわいらしくて頑張り屋さんなお姉さん
あたしと似ていると言われて心から嬉しいと思えた人


『じゃあ、将来、日詠先生の病院で臨床心理士として働いたりして・・・』

「どうだろう・・・でも、僕は彼女の手を放してしまったから・・・」

『どうして・・・・』


レイナさんのために業務時間外にまで松浦先生から彼女のハンドセラピィを習得する努力をしていた日詠先生
彼女のことを本当に大切にしているんだと第三者であるあたしですら感じていたのに
どうして、彼は彼女の手を放してしまったんだろう・・・?


「伶菜が自分で選んだ道を何も遠慮することなく歩ませてあげたかったから。」

『でも・・でも・・・お互いに好きならば・・・一緒にいてもそれができたんじゃ・・・一緒にいるからこそできることもあるんじゃ・・・』

「不器用だから・・・僕も・・・伶菜も・・ね。だからこんな愛し方しかできないんだ・・・情けないけれど。」


“だからこんな愛し方しかできない”

日詠先生のその言葉から、レイナさんの手を放してしまっても、今でもなお、彼女を想い続けているということが痛い程伝わってくる

離れていても、今もなお、彼女を想う
彼女の手を敢えて放してあげた彼に
彼女と再び手を繋げる保障なんてなさそうなのに・・・

自分のことでもないのに
また泣きそうだ
離れているからこその苦しさを今、痛感しているあたしだから


「でも、僕は彼女を・・・伶菜をちゃんと迎えに行く。頑張っている彼女にふさわしい男になって。」

『・・・・・日詠せんせい・・・・』

「だから今は自分のできることをしっかりやる。彼女が頑張っているように、自分もね。」



こんなに優しい人にここまで想ってもらえるなんて
本当にレイナさんが羨ましい
そう思わずにはいられなかった


「だから、神林さんも不安にならなくてもいい。離れていてもお互いに何が一番大切なのかわかっている・・・僕はそう思っているから。」



“離れていてもお互いに何が一番大切なのかわかっている”

これまでの岡崎先生とあたしは
それをしっかりわかっている
そう思ってた
この2年間という月日があたし達の、遠距離恋愛という関係を強くしてくれている
あたし達はただ物理的に離れているだけ
そうも思ってた

でも、今は
物理的だけではなく、心理的にも離れてしまっているの?
そんなことまで思ってしまう


だから、今すぐに岡崎先生と向き合ったら
多分、あたしは冷静ではいられずに彼を責めてしまうだろう
彼を取り巻く仕事上での事情なんて何もわからないのだから

だから、今は距離を置いたほうがいいのかもしれない

“離れていてもお互いに何が一番大切なのか”を改めて考えてみるためにも






ピリリリ♪ピリリリ♪



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