Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!



『とうとう明日か~・・・発表・・・』


あたしは研究会が行われる横浜のホテルで、発表原稿をとことん見直し、質疑応答までも散々考え尽くしてもなお身震いをしていた。
評価実習の時の症例発表での自分の不甲斐なさを想い出して。


『絵里奈も研究会に来るって言ってたし・・絵里奈に気合い入れてもらおう・・・』


評価実習中での症例発表の時のように、自分を見守ってくれた岡崎先生はもういない。
だからあたしは、卒業後、離れていてもずっと励まし合っていた絵里奈の存在に依存して、ようやく眠りについた。



翌日。
とうとう迎えた全国作業療法学術研究会。
場所は横浜の国際会議場。
あたしは絵里奈と一緒に参加している。

あたしは回復期リハビリ領域、絵里奈は呼吸器疾患境域で普段従事している
多くの学会や研究会は回復期リハビリのみ、呼吸器疾患を扱う内部障害領域のみというように専門領域単独で行われることが多い
だから絵里奈と一緒に同じ研究会に参加できるのは珍しい

また、脳血管領域・呼吸器・循環器、緩和ケアなどの内部障害領域・整形外科領域・精神科領域・高齢期領域・在宅領域などの作業療法の全領域が一堂に会する当研究会は作業療法士としての視野を広げるためにも貴重な機会だ

おまけに領域毎に会場が異なり、今回の研究会では全部で12会場で演題発表や教育講演などが行われており、油断すると迷子になり得る


『絵里奈、お疲れ~。相変わらず強心臓だね!』

「ありがと!でも、やっぱり呼吸器作業療法のスペシャリストの質問はキレキレで、さすがのあたしもお手上げだった~!!!」

『えっ?そうだった。あたしからしてみれば、よくわからない専門用語が飛びかって白熱してたけど・・・』


絵里奈の、呼吸器作業療法の演題発表。
それは絶対見逃したくない一心で、発表予定時刻の20分も前から会場でスタンバイしていた。


『絵里奈、凄いね。このまま呼吸器作業療法のスペシャリストを目指すんでしょ?』

「うん!そう。呼吸器感染症の後遺症で苦しむ人ができるだけ楽に安心して過ごせるように・・・もっともっと学びたいの!」


質疑応答では苦戦したようなことを言っていた絵里奈だったけれど、今回の経験を今後に活かしていきたいと目を輝かせている。


『あたしも頑張らなきゃ!』

「できる・・真緒なら・・・」

『うん!』

「・・・って伝えろって…言われた。」

『伝えろって・・・誰に・・・?』

「あ~誰だっけ・・・?空耳・・・?・・あっ、真緒、時間!!!!そろそろ会場行かなきゃ!」


突然目が泳いだ絵里奈。

でも、演題発表の時刻が近付いている今のあたしにはそれを追求し続ける時間はなくて。
領域は異なるけれど、あたしも絵里奈みたいに今後に活かせるような経験をしたい
・・・そう思いながら、自分が演題発表する会場へ向かった。





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