Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!


『終わった・・・とりあえず良かった・・・』


演者台から降壇する最中、緊張から解放されたせいなのか、足が脱力する。
ここ数か月、この演題発表だけに没頭していたから
自分のできることをしようと何度も何度も自分に言い聞かせて


でもそれも今日で終わる
もう何もすることがなくなったあたしは明日から何を目的に過ごしていけばいいんだろう・・

そんなことが頭を過った瞬間だった。


「真緒、お疲れ!!!! 脱力状態かもしれないけれど、行くよ!!!!」

『へっ?どこへ?』


珍しく目をギラつかせながらあたしの元へ駆け寄ってきた絵里奈があたしの手を引いて走り始めた。


「もう、ここ、会場広すぎ!!!!」

『だから、どこ行くの?』

「もう、説明している暇ないから黙ってついてこい!!!!」


必死になって走っている絵里奈。
初めて見るかもしれない。
運動大嫌いな彼女がこんなにも必死に走っているところを。

さすがに研究会会場で全力疾走しているふたり組は他にいないこともあってか、周囲の人は不思議そうな目であたし達を見てくる。

でも絵里奈はそんなのお構いなしでどんどん前へ進んでいる。




≪楽しみ~。今日、このためにここ来たんだ~。北海道から≫

≪懇親会、行くよね? 先生とお知り合いになりたいもん!≫

≪凄いよね~。まだ若いのに・・この前、海外の学会でも発表してたって。≫

≪俺は今日、絶対質問する!先生の記憶の中で爪痕を残したいから。≫




絵里奈の走るスピードが落ちた会場の前で聞こえてきたそれらの声。
その声をしっかり聞こうとしたのか絵里奈が完全に足を止めた。


「凄い人気~。実際のところは、ほっておけないぐらいの好きな女のストーカーしちゃう男なのにね・・・焼肉屋で。」

『何、それ・・・』

「だって、あたし、あの日、長野先生と松浦先生と一緒にイタリアンのお店に行こうとしていたのに、あたし達無理やり連れていかれたもん・・・真緒と下柳先生のいる焼肉屋へ・・・今からここで演題発表する人気者に・・・」

『えっ・・・』



絵里奈が指さした先。
さっきいた会場とは別の会場の入り口にある看板。

そこに書かれていたのは
“整形外科疾患:ハンドセラピイ(2)”
という文字だった。


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