Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
「見るんでしょ?岡崎先生の演題発表。」
『・・・そんなつもり、なかった。』
「なんで? もう岡崎先生と別れたと思っているから?」
『・・・うん。顔を見たら、多分、あたし・・・もっとダメになる・・から。』
会場の入り口で後ずさりするあたしの手を引いて、会場内へ入るように説得していた絵里奈。
絵里奈には、5か月前に岡崎先生と距離を置いたことを話してある。
本当に落ち込んでいたのを彼女に気付かれたから。
「真緒・・・・」
でもこれ以上あたしがダメになるのを、見ていられないと思ったのか、あたしの手を引く彼女の手の力が若干緩くなった。
『ごめん。あたし、別の会場で気になる演題があるから・・・』
「真緒・・・」
今、この場を離れることは多分、彼女の気遣いを台無しにする
そんなことは百も承知
でも、岡崎先生から逃げたあの日から、彼のことを想わないように気を紛らせていた今回の研究会発表が終わった今
燃え尽きた感に襲われているあたしには重すぎる
岡崎先生を意識せずにはいられない環境へ再び足を踏み入れることは・・・
「戸塚さん!!!! 伊織・・・見なかった?」
「松浦先生!!!!・・お久しぶりです!!!! ・・・岡崎先生ならこの会場にいるのでは?」
「伊織、ちょっと発表見てくるからってここから出て行ってしまって・・・」
ハンドセラピイ会場の入り口前で中に入れずにその場に踏み留まっていたあたし達のところに松浦先生が息を切らしながら駆け寄ってきた。
久しぶりに会う松浦先生。
彼はあたしと絵里奈が評価実習を行った名古屋南桜総合病院の作業療法士で、絵里奈のスーパーバイザーだった人。
いつもは穏やかだけど冷静という、しっかり者のお兄さんという感じな彼が、今、明らかに焦っている。
「神林さん、なぜここに?」
しかも、あたしの顔を見て不思議そうな顔をして。
『・・・・・・・・』
あたしも聞きたいですよ
なんであたしがここにいるのかって
それになんで今、松浦先生があたしを見て不思議そうな顔をしているのはなぜかについても聞きたいんですけど
「伊織、神林さんの発表を見に行ったんだ・・・自分の演題発表の時間まであと10分しかない中で・・・」
『あたしの発表・・・?!・・・しかもあと10分って・・・』
「しかも、神林さんの発表会場に行くまでに、参加者に声をかけられていて、なかなか移動できずにいたから、今はこっちへ向かう最中にその状態なのかもしれない・・・」
『もう発表の時間なんじゃ・・・・』
あたしの発表を見に行って
それで岡崎先生の発表ができなくなったりしたら・・
しかもさっき廊下にいた人達は、絵里奈の話から推察すると、多分、岡崎先生の発表を聴きたい人達なのかもしれない
「あっ、岡崎先生、来た!!!!」