Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!


「最後なんて・・・そんな・・・岡崎先生、あんなにも真緒のことを想っているのに・・・さっきだって、“できる、真緒なら”ってそう伝えてって・・・」


絵里奈まで泣きそうな声でそう言い、紙飛行機をじっと見つめる。

あたしの発表前に、彼女が同じことを言って、目が泳いだのは、岡崎先生から伝言を直接預かっていたせいだったんだ・・・


「やっぱりダメだ。神林さんはちゃんと知っておかなきゃ・・・数か月前の伊織のことを・・・伊織は、自分が悪いから・・言い訳とかしたくないからって神林さんには黙っているみたいだけど。」

『・・・・・・・・』



松浦先生が言う、“数か月前の伊織”
それはおそらく、物理的だけでなく心理的にもあたしとの距離が開いてしまった5か月前の岡崎先生のことなんだと思う

自分が悪いから・・・
やっぱり浮気だったのかな?
でも仕方ないのかもしれない
物理的にどうしようもできない距離をできるだけ会う機会を増やして心理的距離を増やさないようにしていたけれど、
やっぱり遠くの恋人より近くの他人を選んでしまうのかもしれない


「でも、伊織はまったく悪くない・・・伊織に好意を持った実習生に自宅を突きとめられて、実習時間外にも付きまとわれていたんだから・・・しかも、“私のことも苗字ではなく、下の名前で呼んで下さい”って迫られて本当に参っていたんだ。」


実習生って若菜さんのこと?
しかも、若菜って苗字だったの?
岡崎先生と若菜さんの間でそんなことがあったの?
彼が参ってしまうようなことが・・・


「その実習生は極端な例だけど、さっき見たように伊織は学生にも人気がある。3年生でうちの病院に評価実習に来た学生が、4年生に進級して臨床実習へ来る別の学生に伊織の良い評判を伝えるみたいでね。」


あたしが評価実習を終えた後は、岡崎先生に告白すらさせてもらえなかったことで落ち込んでいて
名古屋南桜病院に臨床実習に行く同級生に、彼の良い評判なんて伝える余裕なんてなかったな
でも、今さっきここで見た光景をみれば、学生たちの間でそういうことが行われていてもおかしくはなさそうだ


「でも、伊織は自分のすべきことを淡々とする・・・そこがまたかっこいいんだと思うけど、神林さんの実習の時は、淡々とじゃなかった。その真逆で、見ているこっちが心配になるぐらい空回りしていたぐらい・・・」


岡崎先生が空回り・・・
あたしの実習の時って
彼は無茶ぶり日常茶飯事だったような・・・
どこでどういうふうに空回りしていたんだろう?

でも、その話
実習生だった頃のあたしが彼にとって特別な存在だったように聞こえる
あたしが一方的に彼に好意を寄せていたんだと思っていたのに・・・


「そんな彼が、最後だなんて・・俺は本当に信じられない・・・やっぱり神林さんは見ておくべきだ・・・伊織の発表を・・・・」

「そうだよ、真緒!!!・・・岡崎先生のハンドセラピイの相棒である松浦先生がそうおっしゃっているんだもん。見にいかなきゃ!!!」

「発表を見てからでもいいんじゃない。紙飛行機の中を見るのは。こんな機会はたぶんもうないだろうからね。」


あたしは松浦先生と絵里奈に背中を押される形で岡崎先生の演題発表が行われる会場へようやく入った。


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