Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!


けれども・・・
頑張るという気合だけでは乗り切れないのが臨床実習。


「左肩、もう少し可動域あるね。」


あたしの症例レポート対象患者になって下さった前島さんの関節可動域を計測中、麻痺している左肩に触れているあたしに下柳先生はそう助言してくれた。

「ここまで動かすことができるよね。」

しかも、下柳先生は前島さんの腕を支えているあたしの手を取って、一緒に肩の動く範囲を確認してくれている。

先生の胸板がもう少しであたしの背中に触れそうな距離。
がっちりとした両腕で包み込まれるまであと10cm。
先生の爽やかなクールミントの香り付き。

こういう体勢。
彼氏いない歴イコール年齢にあたしには未経験で。

どうやって息をしたらいいのかわかりません。

前島さんの計測検査、どんどん進めなきゃいけないのに・・・

患者さんの計測検査初体験にして
こういう体勢も初体験

息ができないところか心臓までバクバク言い始めた
どうしよう
集中できない!!!!





「まお!!!」

『?!』

「とっとと計測検査終わらせろよ!」


怒ってる・・・

般若が


「いつまで、検査してるんだよ!」


というか、まだ計測検査始まったばかりなのに
しかも、あたしの症例レポート患者さんなのに

これで終わったらレポート書けない!!!!


般若、鬼?!





「まだ始めたばかりですよ、岡崎さん。」

「始めたばかり?んだと?」

「ここで終わったら、神林さん、レポート書けませんから。」

「まお、それでもいい。書け!!!」


あたしの声を代弁している下柳先生と
般若顔5割増で無理難題を要求している岡崎先生。

どちらもバイザーというあたしの指導者なわけで。

どっちをとっても多分板挟み地獄だと途方に暮れていたあたしを助けてくれたのは

「伊織~!!!!ワケわかんないこと言ってるじゃない。下柳くん、あと、頼んだ。」


仏の松浦先生だった。


実習7日目午後

ふやけた海老天ぷらと爽やかなクールミントの香り
それらが絵里奈とあたしを揺さぶるモノとなり始めた日

< 22 / 226 >

この作品をシェア

pagetop