Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
岡崎先生から直接手渡されたこのコピー用紙
そこに書かれたはっきり言って下手くそと言っていい“レポート
・・・まお作”テニスボールサイズの太くて大きい文字は岡崎先生の手で書かれたモノで、実際にあたしはその場面を目視している
一方、そのコピー用紙の裏の端っこに書かれていた、飴玉サイズの小さくて細い文字
あたしはそれを岡崎先生が書いた姿を目にしていない
『でも、あたしの名前をまおって呼ぶ人は・・・』
マオちゃんとフレンドリーに呼びかけて下さる整形外科医師の森村先生
そして
まお~と気怠いテンションで呼びつける岡崎先生ぐらいだ
しかも、ここに書かれた真緒は“ちゃん”がついてない
『もしかして、これも、岡崎先生が・・・?』
おふざけ感満載の“レポート・・・まお作”と
おまじない感とか祈り感とか、そういうものが滲み出ているような“できる。真緒なら”
文字の特徴も書いた人の想いも全く正反対なそれらが
もしも同一人物によって書かれたモノならば
どっちが本当の人物なのか戸惑ってしまう
だからどう一度その文字達をじっくりと眺めてみたら
・・・気がついた。
さっきまでどうにもできなかった手の震えが治まっていたことを・・・
『なんかよくわからないんだけど、岡崎マジック・・ってやつ・・かなあ』
自分でもなぜだかわからなかったけれど
今の自分なら長谷川さんとちゃんと向き合える
そんな気がしたあたしは、再びそのコピー用紙を右手でくしゃりと丸めてポケットに突っ込んでから、その右手で拳をぐっと握り、長谷川さんの病室のドアをノックした。
「・・・はい?」
ドアの向こう側から聞こえた、眠そうなの男性の・・・長谷川さんの声。
返事をしてくれたらしいけれど、疑問形。
なんか用か?を暗示しているようにも聞こえてしまったあたしの手は
反射的に再び震えだす。
でも、ここで踵を返してこの場を離れたら
多分もう前に進めない・・・
そんな気がしたあたしはもう一度、さっきみたいにケーシーのポケットに手を突っ込む“おまじない”をしてみた。
ポケットの中で右手と丸めた紙が擦れガサリと小さく音を立てた。
その音でまた手の震えが止まり、自分がすうっと落ち着く感覚を取り戻した。
まるで、岡崎先生がすぐ傍で“できる。真緒なら。”と言ってくれているみたいに。
できる、あたしなら・・・
あたしはあたし自身でそうやっておまじないをかけ、病室のドアが閉まったままで口を開く。
『リハビリ学生の神林です。今、お邪魔してもよろしいでしょうか?』