Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!



「もしかして、過去のこと、気にしてた・・の?」

『・・・はい。』

「バカね、公私混同とかしないのに、あたし。」

『でも・・・』

「でも、公私混同とか思われても仕方ないか・・・あなたも元カレに浮気されて別れたんでしょ?・・・だからあたしもあなたも1人前の、しかも優秀な作業療法士になって元カレのアイツを見返してやる・・・そのためにアナタをしっかりと育てる・・・そう思ってやっていたから。」



長野先生の公私混同
それは絵里奈への敵意ではなく、浮気性の元カレへの敵意
それをプラスに変えようというポジティブな公私混同だったらしい



「でも、誤解させちゃったみたいで、ごめんなさいね。」

「長野先生・・・」

「コレ、使って一緒に勉強しようか。」

「はいっ!!!!」


こんなに優しい表情の長野先生を見たのは初めて。
多分絵里奈もそうだろう。


ほっこりとした気分になったのはあたしだけじゃなかったみたいで・・

「おい、まお。今日はお前のフィードバックも長くなるから、先に腹ごしらえするぞ。これでメロンパン買ってこい!棚オールで。」

いつもの般若顔がちょっとだけ優しいお兄さん顔になっていた岡崎先生から千円札を渡された。


「焼きそばパンじゃなくていいですか?」

「こういう時のパンと言えば、メロンパンだろ?」


こういう時のパン = メロンパン
こういう時 = 頑張る時
そういうことを言いたいんだろう

レポートが進んでいないあたしが頑張る時であることはもちろんのこと
これから呼吸器の勉強を一緒に始めるであろう絵里奈と長野先生も頑張る時ということも暗示しているんだろう

メロンパン棚オール注文しているぐらいだから間違いない!


「でも、日詠先生が買おうとしていたら1個だけ譲れよ。俺は森村先生のように日詠先生に宣戦布告する勇気はないから。」

『はい!メロンパン棚オール、場合によっては1個除外で。かしこまりました!』


絵里奈と長野先生の背中を押してあげるような般若からの、隠しきれていない優しさが滲み出ているおつかい命令。

そんな嬉しい命令に従うことになったあたしはおでこの横で敬礼ポーズをしてから病院内のコンビニに向かった。

背後から聞こえてきた、“1個譲っても、スキになるなよ”という岡崎先生の謎めいた呟きなんか気に留めることもなく・・・





実習11日目


絵里奈が実習始まってからずっと心にひっかかっていた元カノという棘

それがその元カノによって取り除かれ、その人がお姉さん的存在になった
それを見つめる般若がちょっとだけお兄さんのような存在になった
般若、意外といい人じゃん

今日は意外続きだったけど優しい気持ちになった・・・そんな日




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