Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
【Study12:憧れの存在と一緒に・・・】
【Study12:憧れの存在と一緒に・・・】
昨日は般若の予告通り、いつもよりも帰宅時間が遅くなった。
般若によるあたしのレポートへのツッコミ、いや指導が熱かったからだ。
絵里奈も長野先生とのフィードバックが盛り上がったようだったけれど、今朝の彼女は実習が始まって初めて見る清々しい顔をしている。
そんな今日は実習12日目の土曜日。
実習させて頂いているこの病院のリハビリ部門は土曜日も午前中だけ稼働している。
「新しい靴下、準備してきた?」
『はい!!!!勿論です!』
「ははは、僕も靴下新品。」
今日は下柳先生と一緒に脳外科症例の前島さんの自宅へ訪問させて頂く予定。
前島さんご家族の仕事の都合で土曜日の訪問を希望されて今日になった。
『あれ?今日、稲田先生はいらっしゃらないんですか?』
「あ~、今日、稲田さんは娘さんが風邪をひいてしまって、ママ、仕事行かないで~で娘さんに泣きつかれたからって・・・・休むことになったんだ。」
稲田先生は30代後半のベテラン理学療法士さん。
前島さんのリハビリは担当療法士がふたりいる。
ひとりは理学療法士の稲田先生。
彼女によって主に身体の動きや歩き方の訓練などが行われている。
もうひとりの担当である作業療法士の下柳先生が日常生活に関する動作などの応用動作の訓練や認知機能訓練を担っている。
そのふたりが中心となり、脳外科病棟の看護師さんと協力しながら、前島さんが自宅生活可能となるようなアプローチや関わりを行っている。
「だから、今日は神林さんがピンチヒッターってとこ。」
『担当看護師さんも同行されるんですよね?』
「いいや。担当看護師は今日夜勤明けで無理だって。だから神林さんと僕、ふたりで。」
あたしと下柳先生、ふたりで・・・
確か、前島さん宅へは病院の公用車で向かうと言ってた
前島さんのご家族の車に先導されて、その後ろを追いかけていくって
ちょっと待って
もしかしてあたし、下柳先生と車内ふたりきり?!
さすがに緊張せずにはいられない
ケースバイザーである人とふたりきりで何、喋っていいのかわからないし
『・・・あたし、ピンチヒッターの役割、多分できないです・・・』
「そんな肩肘張らなくてもいいよ。せっかくの退院前訪問指導の機会なんだから、リラックスして見学しよう。」
そう言いながら下柳先生は穏やかな笑みを浮かべた。
確かに下柳先生のおっしゃる通り、退院前訪問指導は患者さんが必要な時に行うものだから、学生の実習期間中にそれを見学できるのは本当に貴重な機会
それに緊張しているほうが、下柳先生にも気を遣わせてしまうだろうし・・・
『・・は、ハイ!!!!』
「じゃあ、前島さんやご家族が病院玄関で待っていて下さるはずだから早速、行こう。」
『あっ、は、ハイ!!!!』
あたしはちょっと声が裏返ってしまったけれど元気よく返事した。