Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
「神林さんだっけ?」
『あっ、はい!』
「下柳くんみたいな作業療法士になれるように頑張りなさいね!」
『ハイ!!!!』
前島さんの退院前訪問指導に満足できた様子のケアマネジャー山中さんがさっきとは別人のようにフレンドリーな笑顔であたしにもエールを下さった。
あたしもさっきとは異なり自然の笑顔になれた。
「それじゃ、前島さんの外出時間がもうあと少しで終わるので、そろそろ病院に戻りましょう。」
時間管理まで完璧な下柳先生の一声で退院前訪問指導はおひらきとなり、前島さんご一家とともに来た道を戻った。
『下柳先生、今日は見学させて頂きありがとうございました。』
「お疲れ様でした。」
『今日、ここに来るまでは、前島さん、本当に自宅退院できるのかな~って心配していたんですけど、退院前訪問指導の様子を見ていたら、これなら大丈夫だって思えました。凄く貴重な機会に立ち会えて本当に良かったです。』
「それは良かった。」
「簡易手すりは場所をちゃんと選べば色々使えるんですね。シャワー椅子から立ち上がる時、浴槽移乗の時・・とか。やっぱり患者さんにとっての現場で使ってみるのが一番わかりやすいですね・・・ってあたし、喋りすぎですよね?」
前島さん宅に向かった朝の車内での緊張感ではなく、退院前訪問指導を見学できたことで気分がやや高揚していたあたし。
いつになく饒舌な自分に驚くぐらい。
「こちらこそありがとう。僕が山中さんやご家族と話をしている間に前島さんの話し相手をしてくれていたよね。助かったよ。」
そんなあたしに呆れることない大人な下柳先生。
しかも、ちょっと離れた場所で話し合いをしていた彼があたしの様子まで気にかけて下さったことにも驚く。
「じゃあ、今日は予定通り、焼肉行こうか。奢るから安心して。」
『焼肉!!!ハイ!!!!・・・あっ、でも、今日の訪問指導の内容を加えたレポートがまだ・・・』
「これまでの評価へのレポートがちゃんと書けていたから、今日の評価内容を加えることもそんなに時間がかからないと思うから・・・今日の訪問指導もうまくいった打ち上げも兼ねて。」
『じゃあ・・・お言葉に甘えて。』
「夜でもいい?僕、今日中に今日の訪問指導の内容を報告書にまとめて山中さんへ届けないといけないから」
下柳先生はハンドルを握ったまま、こっちを向いてあたしの様子を伺う。
ちょっと申し訳なさそうな顔で。
もうすぐ11時半。
病院に戻っても、前島さんを安全に病室まで送り届けなければならない
昼食時間帯に焼肉へ行くにもちょっと遅くなりそうだから、あたし自身も焼肉は夕飯でと思っていた
だから
『じゃあ、夕方、また病院へ来ます。今、滞在している寮は病院から3分の場所ですし!』
饒舌状態を維持していたこの時のあたしは下柳先生のお誘いに予定通り参加することにした。