Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!


そしてやってきた下柳先生との待ち合わせ時間。


「神林さん、もしかして結構待った?」

『い、いえ・・今、来たばかりです!』


申し訳なさそうにあたしに問いかけた下柳先生。
本当は楽しみすぎて30分前に待ち合わせ場所にしていた病院玄関に到着していたけれど、また気を遣わせてはいけないと咄嗟に嘘をつく。
こういう嘘ならついていいだろう・・と自分に言い聞かせながら。


「ここから歩いて5分ぐらいのところに、美味しい焼肉屋さんがあるからそこでもいいかな?」

『はい、どこでも!』

「じゃあ、行こうか。」


黒色のダッフルコート。
襟元からは紺色のハイネックセーター、裾下からはアイボリーのスリムチノパンが見えている。
シンプルだけど、一目でわかる品の良さ。
私服もスマートな下柳先生。
その風貌にもドキッとしながら彼の後ろをついて歩き始める。


「いらっしゃいませ。お客様は2名ですか?」

「ええ、個室、空いてます?」

「申し訳ありません。本日はあいにく予約がいっぱいで。ダイニングテーブル席でもよろしいでしょうか?」

「はい。ではそちらでお願い致します。」


店員さんとの話も丁寧かつスマートで大人な下柳先生
仕事もできて、プライベートも大人な対応ができる彼
学生のあたしには眩しく見えても仕方がない

絵里奈、あたしも認めるよ
下柳先生はイケメンだって・・・


「注文するけど、食べたいもの、苦手なもの、遠慮なく教えて。」


学生仲間で行く焼肉屋はガイガイワヤワヤの賑やか定額食べ放題なお店。
でも、今いるお店は店内の照明が少し暗めで、ジャズが心地よく流れていて、テーブルの真上にもレトロなデザインの排気口があるオシャレなお店。
メニュー表を見ても、一皿でおいしいランチが食べれてしまうような高級店。

『苦手なものはないです!食べたいものも・・・・なんでもってとこです。』

だから、いつものように好き放題注文できない


でもそんなあたしの頭の中を透かしたのか

「遠慮しないでね。じゃあ、適当に頼むから。」

下柳先生は店員さんを呼んで、テキパキと注文をして下さった。


先に運ばれてきたウーロン茶。
これも下柳先生が頼んで下さったもの。
それをあたしに手渡ししてくれてすぐに一緒に乾杯をした。


「もしかしてお酒のほうが良かった?」

『あっ、お酒大して飲めないので、ウーロン茶で良かったです。』


2杯目からは遠慮しないで好きなものを飲んでねという気遣いも伝わってくる。
本当はお酒凄く飲めるけど、寝不足なこともあって粗相してしまうといけないからウーロン茶を注文してくださったのはありがたかった。


「実習、大変?」

『ええ、まあ・・・でも、先生方、皆さん親切で助かっています。』

「まあ、手厳しい人もいるけど・・・でも僕が見ている限り、神林さんはよくやっていると思うよ。」

『嬉しいです。これからも宜しくお願いします。』


私の想いにも耳を傾けてくださっていることもありがたい
そう思っているうちに店員さんがお肉を運んできてくれた。

さあ、食べようと下柳先生が鉄板にお肉を載せて下さる。
話をしながらも美味しいお肉が食べられるよう、焼いているお肉をひっくり返したりして焼肉奉行をして下さる。
食べ頃の勧め方もスマートで。


楽しい!
美味しい!
幸せ!

こんなあたしは下柳先生と色々な話をする。
時には自分から話を振ってしまうぐらい楽しくて。


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