Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
【Study17:優しくて親切で謙虚で頼りになるお兄さん医師からの難しい助言】
【Study17:優しくて親切で謙虚で頼りになるお兄さん医師からの難しい助言】
実習16日目。
残りあと2日。
「おにぎりのパッケージの開封動作の分析評価、よくできてる。」
朝イチで岡崎先生に提出した長谷川さんレポート修正版。
それを、彼が朝礼後すぐに添削して下さって、午前のリハビリ業務開始前に声をかけられた。
「長谷川くんができないつまみ動作を代償動作で工夫する指導をしたり、自助具を作るという作業療法プログラムを立案したこと、そして、中期目標でADL能力向上のADL動作をより具体的に列挙できたのは、作業療法学生レベルでは合格だ。」
『ありがとうございます。』
ここ最近、岡崎先生とは、勉強以外のことでもいろいろあった。
焼肉屋とか朝帰り疑惑とか。
だから、変に意識してしまう自分がいて、フィードバックの時間とかはできるだけ彼の指導に集中するよう、ひたすら自分に言い聞かせている。
今もまさにそのモード。
合格という言葉にうれしい声を上げたい気持ちも、冷静でいなきゃと自分をセーブすることによって押さえつけている。
「でもな、あくまでも作業療法学生レベルの合格ってとこ。ハンドセラピストレベルでは不合格だな。」
『不合格・・・ですか・・・ハンドセラピストレベル・・では・・』
ハンドセラピストとは整形外科疾患の中でも主に上肢(腕)~指のケガや疾患を取り扱う手の外科医師の下で従事している療法士のこと。
つまり手の外科疾患の訓練を専門としている。
あたしが実習させて頂いているこの名古屋南桜総合病院では松浦先生と岡崎先生がハンドセラピストとして従事している。
よく作業療法室で姿を見かける森村先生は彼らに指示処方している手の外科医師なのだ。
「なんか酷くガッカリしてね~か?」
『不合格って、やっぱり哀しいです。』
「そんなにガッカリするなって。学生レベルでは大丈夫だから。」
岡崎先生は珍しくそう励ましてくれながら、なぜ不合格なのかを詳しく教えてくれた。
「だから長谷川くんの腕神経叢麻痺は真緒も高位診断評価できていた通り、下位不全型。不全ということは、完全に神経がダメになったわけじゃなく、残存している神経もあるということ。」
自分ができていた評価があったことが、今ある目の前の難しそうな内容を少し身近にしてくれるこの説明。
「だからその残存機能をできるだけ使えるようにして、足りない部分は腱移行で補って、彼ができていないつまみ動作を獲得する。だから現時点でのハンドセラピストレベルのリハビリ短期目標は、真緒が立案した内容プラス残存機能の向上+腱移行術に向けてのdonor muscleの強化ってとこだな。」
『なるほど・・・』
「あ~、donor muscleってのはだな~」
『腱移行術において移行腱になる腱に繋がる筋肉ですよね?・・・ついでに、腱移行術は横文字で言うと、tendon transfer。』
「なかなか、やるな・・・まお。」
『たくさん見ていますから。岡崎先生が記入されている横文字オンリーなカルテ。もちろん、岡崎先生のハンドセラピィも。』
大学の授業でもハンドセラピィの講義はあった
でも、絵里奈が苦しんでいる呼吸器疾患と同様にほんの概論程度
作業療法士としてそういう専門的な領域もあるからそれは知っておきなさいっていう程度
だから生きたハンドセラピィを直に目撃できるのは本当に貴重なのだ