Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!


『日詠先生・・・先日はメロンパン、ご馳走様でした!本当に美味しかったです。』

「それは良かったです。」


リハビリさんにはお世話になっていると言っていた日詠先生。
本当だったんだと驚きながらも、メロンパンのお礼の言葉を伝えると、彼は爽やかな笑顔で応じて下さる。


「日詠先生と既にお知り合いだったんだ・・・神林さん。」

『ええ・・・院内コンビニで奪い合いかけたメロンパンをご馳走になったので。」


あたしのメロンパン奪い合い発言がツボにハマったのか、クスっと笑いをこぼす日詠先生に松浦先生も笑顔。


「メロンパンの奪い合いが出逢いか・・・神林さん、なかなかやるなぁ・・・で、今日はもう帰れるんだね。」

『はい。やっとレポート完成したんで。』

「伊織もOK出したんだ。良かったね。」


岡崎先生が厳しい指導をするバイザーであることを知っている松浦先生が
安堵した表情でそう言って下さった。

こういうところからも自分の実習があともう少しであることを感じずにはいられない


「そうだ!もし良かったら神林さん、僕らに5分だけ時間くれない?」

『えっ、私が、ですか?私でお役に立てますか?』


松浦先生からの、突然のお願いに戸惑う
でも、松浦先生にも実習中、絵里奈と同様にたくさんお世話になっていたから5分くらいなら・・・


「背格好だけじゃなく、真面目な雰囲気も似ているから大丈夫というか、適任!」

『似て・・いる?』

「そう。似てますよね?日詠先生?」

「・・・ええ。似てますね。実は僕もコンビニで神林さんをお目にかかった時はちょっとびっくりしました。」


それってメロンパンを譲って奢ってもらった時のことだよね?
あたし、レイナさんみたいにかわいくないのに・・

でもそんなレイナさんに似ているって言われるの、素直に嬉しい
だから5分ぐらいなら、いいか~

『あたしなんかでよければ・・・』

あたしはこれまで彼らから受けたありがたい事柄への返礼をするつもりで、5分だけ彼らに付き合うことにした。


「助かる。丁度今、日詠先生と、レイナさんのハンドセラピィを練習していてね・・・」

『・・・日詠先生がレイナさん役・・ですか?』

「違うね。レイナさん役は僕で、日詠先生はセラピスト役。」

『えっ?日詠先生、お医者さんなはずじゃ・・・』


確かハンドセラピストは作業療法士、または理学療法士がその役割を担っているはず
日詠先生はお医者さんかと思っていたけれど・・・とその確認をするために、彼の胸のポケットにぶら下がっている名札に目をやる。

産科医師 日詠 尚史

名札にはそう書いてある


『産科医師・・・ですよね?』

「ええ。でも、伶菜がこちらで受けているハンドセラピィを習得させて頂きたくて、こんな時間に松浦先生に協力して頂いているんです。」

「日詠先生、松浦って呼び捨てでいいってお願いしているじゃないですか!」

「いえ、僕にとっても、松浦先生は尊敬する指導者ですから。」

「ホント恐れ入ります・・・でも、僕じゃ、手指の皮膚が硬くて、それが柔らかいレイナさん役になりきれていないんですよね・・・」

過去にレイナさんのオペ室ストーカーをしていた人で
メロンパンを譲って奢って下さった超国宝級イケメンかつMr.名古屋医大殿堂入りした人で・・・他職種であるハンドセラピィを時間外に学んでいる産科医師
しかも、医師の下で従事する立場の松浦先生を尊敬していると公言する謙虚さ


そんな日詠先生がレイナさんとのご関係がいかなるものかはわからないけれど

『あの~私で良かったら、レイナさん役、しますよ。メロンパン、ご馳走になりましたし。』

メロンパンのお礼をしてもいいと思った。


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