Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
「よろしいのですか?」
『ええ。』
「では、お言葉に甘えて・・ありがとうございます。宜しくお願いします。神林先生。」
『そんな・・神林先生だなんて・・・私、学生ですから・・』
「でも、今の自分にとっては、先生ですから・・・」
『恐れ入ります・・・』
専攻している作業療法に関しても全然知識がないあたしを神林先生と呼んで下さる日詠先生の謙虚さ
こういう大人になりたいと思いながら、自分の左手を差し出した。
「では、手をお借りします。宜しくお願い致します。」
『は、はい・・どうぞ。こちらこそ宜しくお願いします。』
日詠先生からの律儀な挨拶に、つい背筋が伸びる
そのせいもあってか、それとも目の前に極上イケメンがいるせいなのか
ドキドキしている。
「力を入れすぎないように・・・ですね。」
でも、さっき松浦先生から力を抜くようにレクチャーされたこともあってか、日詠先生が触れる手の動きが優しくて、ドキドキした胸の鼓動はちゃんと息はできる程度までに安定してきた。
「日詠先生、力加減は良さそうですね。じゃあ、Duran’s Ex、やってみましょうか。」
「Duran’s Exですね。」
松浦先生の指示下で日詠先生はその手技をやり始める。
これまでその手技をかなり練習してきていたようで、戸惑う様子はない。
私の表情を窺いながら、時には“指を動かす僕の力、強すぎませんか?”など、丁寧に進めている
その丁寧な配慮の効果もあってか、指を動かされているあたしはドキドキを通り越して心地いい気持ち良さまでも感じている
日詠先生、手技、上手ですよ!
いわゆる日詠先生の練習台になったあたしだけど
こんな経験はそうそうあるものでもないから
正直嬉しい
寮に帰ったら
Mr,名古屋医大殿堂入りのイケメンに手指の運動をしてもらったって
絵里奈に自慢しよう・・・
「真緒!おい、真緒!」
『・・・ほえ?』
日詠先生の練習台になっているのにすっかり癒されているあたしは
心地よすぎてうとうとしてしまい
夢の中で自分の名前を呼ばれていると思った。
「日詠先生・・・申し訳ありませんが、真緒を返してもらえませんか?」
真緒を返して・・・だって
あたし、この人の所有物?
しかも、ちょっと声が怖い・・・というかこの声!!!!
「彼女にスプリントの作り方を教える約束しているんです。」
その、身に覚えのあるその声があたしを返して欲しい理由をはっきりと伝えた瞬間
あたしは完全に目が醒めた。