Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!
「神林さん、不整脈がないかを見ておきたいから、聴診と心電図検査をさせてもらいますね。」
『・・はい。』
「じゃあ、申し訳ないけど、ケーシーの前を開けて、ブラジャーを少し上げてずらしてもらえますか?」
ケーシーの前を開けて、ブラジャーを少し上げてずらす
普通の男性の前でもしたことないのに
超国宝級イケメンの前でそんなことをするなんて
いつものあたしなら、あり得ないことなんて思ってしまう
でもこの時の日詠先生はどこからどうみてもお医者さんの顔をしていて。
この時のあたしは抵抗したり恥ずかしがったりすることなく彼に言われた通りにした。
「今、もう苦しくなさそうだね。」
『は、はい。』
12誘導心電図の心電計とあたしの様子を交互に見比べている日詠先生。
「ちょっと脈も実測しておきたいから、手首触らせて下さい。」
『はい。』
さっき岡崎先生が触れたあたしの手首。
日詠先生はあたしの橈骨動脈に触れて脈の実測をした後に、岡崎先生が掴んだ同じ箇所を今度は日詠先生がぐっと掴んだ。
またさっきの胸の疼きが起きることが瞬時に頭を過った。
けれども、ちゃんと日詠医師が診て下さっているという安心感からか、さっきのような胸の疼きは一切感じられなかった。
「もしかして・・・」
あたしをじっと見つめながら何かを仮定して考えている様子の日詠先生。
「神林さん、答えることで苦しくなるのならおっしゃらなくてもいいです。とりあえず僕の質問聞いてくれますか?」
『ええ・・・』
「神林さん、岡崎先生に何かされましたか?」
『えっ?』
どこか身体に悪いところが見つかったから精密検査しますか?とか
治らない病気が見つかったけれどもどうしますか?とか
あたしの身体に関することを言われると思っていたあたしは驚かずにはいられない
「自分がされて嫌だと思ったことを何かされましたか?」
日詠先生の、より具体的になったその問いかけ。
確かに、岡崎先生は
俺はアルファベットしか読めない・・とか
大きな赤い×印だけをつけたレポートをあたしに返したり
本当にあたしのことを指導してくれる気、あるのっ?て哀しくなったことはあった
でも、それらは今のあたしには必要だったと言える指導
『岡崎先生に、そんなことされたことはありません!それどころか、あたしに本当に必要な指導をして下さっていて・・・尊敬している存在です。』
だから、胸を張ってこう言えた。
「やっぱりそうなんですね。安心しました。」
『安心・・して頂けた・・・』
「ええ。命に関わるような不整脈もないですし、おそらく寝不足がベースのものだと思います。」
『じゃあ、大丈夫・・・』
胸が疼き過ぎて、死ぬかと思うぐらいの息苦しさだったから
自分でも心配したけどもう安心。
「でも、またこういうことがあるかもしれません。」
『また?』
「ええ。心が反応しようとしない反動が身体に出ている・・・みたいですから。」
『心が反応しようとしない・・・?』
「そう。反応しちゃダメだって自分で心に蓋をしているってとこだね。」
さっきまでのお医者さんモードの彼が、今は優して親切な近所のお兄さんみたいな顔をした。