パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
「ルイ」
 しわがれた声でお祖母さんは彼の名を呼んだ。
 わたしたちは同時に一歩前に出て、頭を下げた。

 それから、ルイはさっそうと車いすに歩み寄り、(ひざまず)くと彼女の手の甲にキスをした。
「お祖母様、お元気そうでなによりです」

 ルイもやっぱり物語の登場人物みたい。
 まるで中世の騎士のよう。
 腰にサーベルでも下げてたら完璧。

「フィアンセの薫を連れてまいりました」
 わたしは2,3歩前に進み出た。
 やだ、足が震える。

「は、はじめまして、久世薫です」
 緊張で声も顔も強張る。
 お祖母さんは一瞬、はっとした表情を浮かべた。

 な、なんだろう?
 なんか失礼な態度を取ってしまったのかな。

 それとも、あの鋭い眼光で、わたしがニセモノだって見抜いたとか? 
 いや、さすがにそんな特殊な能力はお持ちではないだろ。

「まあ、よく似ていること……」
 小さな声でそう呟くと、また元の威厳ある表情が戻ってきた。
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