パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
「薫、この人はお前の許婚(いいなずけ)なんだぞ」
「許婚ってどういうこと?」
「ベルナルド家とうちの祖父さん同士、つまりお前の曽祖父が結んだ約束なんだよ。だからお前がどう思おうと、結婚は初めから決まっていることなんだ」

 ……許婚って。
 いったい、いつの時代のこと?

 話はこうだ。

 さかのぼること、およそ百年。
 わたしの曽祖父である久世勲は、明治時代に成功を収めて、莫大な富を築いた織物問屋『近江屋』の三男坊だった。
 家を継ぐ必要がなかった勲は、憧れの地イギリスの、オックスフォード大学へ念願の留学を果たした。
(その後、兄がふたりとも戦死したので、結局、勲が家を継いで今に至るんだけど)
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