パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 ああ。あの子守唄のことか。
 子供のころ、ママに歌ってもらったことがあるけれど、うろ覚えだ。

「はい、知ってます。少ししか覚えていませんけれど」
 わたしはお祖母さんの耳元で静かに答えた。
「幼いころ、母がよく歌ってくれた思い出の曲なの。少しだけでいいから歌ってちょうだい、薫」
「わかりました」

 わたしは一生懸命、歌詞を思い出しながら、お祖母さんの耳元で、呟くように歌いはじめた。

 ♪ ねんねんころりよ おころりよ
   ぼうやはよい子だ ねんねしな
   ぼうやのお守りは どこへ行った
   あの山こえて 里へ行った……

 彼女はわたしを見て小さく頷いた。
 満足そうな笑みを浮かべて。
 さっき夢で見たお母様を思い出しているのだろう。
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