パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 泣いてしまいそうになったけど、必死で堪えた。

 人生の終わりを迎えるときになってさえ、純粋に母親を慕う気持ちを持ち続けているお祖母さんの気持ちに打たれた。

 でも、本当は、わたしはその望みを叶えてあげられないのだ。
 そう思うと、自分がとてもひどいことをしているように思えてならなかった。
 
 彼女はわたしの手を弱々しく握った。

「Merci beaucoup(どうもありがとう)」
 そうして、また目をつぶられた。

 彼女の手をそっとほどくと、わたしは病室から飛びだした。
< 158 / 245 >

この作品をシェア

pagetop