パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
***
人けのない階段の隅に座ってひとりで泣いていると、ルイがやってきた。
「薫」
わたしはゆっくり顔をあげて、涙でぐしゃぐしゃなまま、彼を見た。
「お祖母様は?」
「大丈夫。今は落ち着いている」
ルイはわたしの隣に坐り、ハンカチを差し出した。
「どうしてそんなに泣く?」
「だって……あんまりだから」
戦争で引き裂かれた日仏の絆を結びなおそうとした父親の願いに応えようと、彼女が生涯を通じて望んできたわたしたちの縁組が……
実は〝まやかし〟だなんて。
乾きはじめていた涙が、またあふれてきた。
やだ、また赤ちゃんって思われちゃう。
わたし、本当にこんなに泣く人間じゃなかった。
卒業式で周りの子が泣いていても、じわりともしなかったのに。
ルイのせいなんだから。
ルイが、わたしの涙腺をいやというほど刺激するせいだ。
人けのない階段の隅に座ってひとりで泣いていると、ルイがやってきた。
「薫」
わたしはゆっくり顔をあげて、涙でぐしゃぐしゃなまま、彼を見た。
「お祖母様は?」
「大丈夫。今は落ち着いている」
ルイはわたしの隣に坐り、ハンカチを差し出した。
「どうしてそんなに泣く?」
「だって……あんまりだから」
戦争で引き裂かれた日仏の絆を結びなおそうとした父親の願いに応えようと、彼女が生涯を通じて望んできたわたしたちの縁組が……
実は〝まやかし〟だなんて。
乾きはじめていた涙が、またあふれてきた。
やだ、また赤ちゃんって思われちゃう。
わたし、本当にこんなに泣く人間じゃなかった。
卒業式で周りの子が泣いていても、じわりともしなかったのに。
ルイのせいなんだから。
ルイが、わたしの涙腺をいやというほど刺激するせいだ。