パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
「もうあっちに行っててよ、ルイ。わたしのことなんてほっておいて」
 わたしはまた、両手で顔を覆った。

 すると耳のすぐそばで、ふうっと大きく息を吐く音が聞こえた。
 ルイの手がわたしの肩に回ってきて、ぐいっと引き寄せらた。

「バカだな。ほっておける訳がないだろう。大事な薫を」

 えっ?
 思わず顔を上げ、ルイの目を見た。

 彼は空いている手がわたしの顎を掬いあげて、自分のほうに向かせた。

「ルイ?」
「薫は祖母を悲しませたくないんだな。それなら話は簡単だ。私たちが真の婚約者になればいい」

 だって、ルイにはソフィアさんが……
 喉元までその言葉が出かかった。

 でも、言葉にならなかった。
 その前に唇を塞がれていた。
「ル……」
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