パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 ルイの、しっとりとした唇の感触に我に返り、逃れようと首を振ろうとした。
 でも、頭の後ろに回った大きな手に阻まれて逃れられない。
 
 重なりあう唇から漏れる吐息の熱さ。
 わたしの頭や背中に優しく触れるルイの手の動き。
 しだいに抵抗する気持ちが蕩かされていき、わたしの身体から力が抜けていった。

 ようやく長い口づけが終わって、わたしはやっと言葉を発した。

「もう突然すぎるよ……ファースト・キスだったのに。心の準備が……」

 至近距離でわたしを見つめたまま、ルイはすこし眉を寄せた。
 そして不安げな声で訊いた。

「その相手が私では、やはり不服なのか? 薫は」
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