パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 ルイの後にシャワーを浴びて、リビングに行くと彼はワインを用意していた。

「薫も飲むか?」
 ワインはあまり好きじゃないから、普段は飲まないのだけれど、今日は飲みたい気分だった。

「少しだけ」
 ルイは頷くと、グラスに半分ほど注いでくれた。

「大学に入った翌年だから、もう12年も前になる」
 ワインを一口飲んでから、ルイは話をはじめた。

 ルイは地元を離れ、パリ大学の経営学部に入学した。

 パリに発つ日、別れを惜しむロザリーをなだめるのは大変だった。

 ロザリーが自分を好きだということは、もうとっくに気づいていた。

 そしてルイも、16歳になって、その名の通り、可憐な薔薇のつぽみのようにみずみずしく美しくなったロザリーを憎からず思っていた。

 列車が発つ直前「かならず夏休みには帰るから」と言って、ルイは罪つくりにもロザリーに口づけた。

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