パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
2・パリに来てくれ⁈
それから約1時間後。
彼の提案で、ふたりきりでホテルの庭園を散策するはめになった。
もう泣きたい。
慣れない草履で足は痛いし。
このいけすかない男とふたりって、超気まずい!
とはいえ、別に並んで歩いているわけではなく、彼は少し前方をすたすたと歩いている。
そして、池にかかる、ゆるやかな太鼓橋の真ん中あたりで、まだ橋のたもとにいるわたしに声をかけてきた。
「歩くのが遅いんだな」
「あなたが早すぎるんです」
彼は立ち止まってわたしを待った。
そして、何を思ったのか、ようやく追いついたわたしの顎を、ほっそりした人差し指と中指でつかむと……クイっと持ちあげた。