パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 芍薬の天然香料は存在していない。
 合成はあるけれど、やっぱり似て非なるもの。
 記憶を頼りに実際の香りを再現しようと頑張っているけれど、想像以上に難しかった。


 食事を終え、リビングに場所を移してから、小瓶に入れた香水をムエットにたらした。
 ルイは目を閉じ、香りを味わっている。

「まだまだ未完成でしょう?」

 ルイはムエットをテーブルに置くと、「いや。すごいな、薫は」とため息交じりに言った。

「想像以上だ。トップのネロリのほろ苦さとピオニーの甘さが調和しているし、アクセントのスパイシーな香りもいいし、私には充分完成した香りに思える。このままで商品になるよ」 
 
「でも、これだと既存のピオニーの香水と大差ないんだよね。なにかが足りない」
< 203 / 245 >

この作品をシェア

pagetop