パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 でも当然、見る目も厳しい。
 そのなかでプロとしてやっていくには、自分の〝売り〟は何か、それを最大限に生かすにはどうすればいいか、つねに意識していないといけない。

 現段階でのわたしの最大の売りは「香道を学んだ日本人」ということだと思っている。

 そう、香道……
 祖母の元でお稽古しているときは、もう 虫唾(むしず)が走るほど大嫌いだったのに。
 最近は、あの経験が今に生きていると気づかされることがとても多い。

 何しろ香道は、お香のわずかな香りの違いを嗅ぎ分ける技術を身につけるもの。

 調香師としてこの技術を会得していることは、とても大きなアドヴァンテージだ。
 
 今となっては、子供だからと言って容赦せず、厳しく指導してくれたお祖母様に感謝しているぐらいだ。

「まだ時間はあるんだから、納得がいくまでやればいい」
「うん。そう思ってる」
 ルイの言葉にわたしは頷いた。
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