パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
***

 とはいえ、なかなか納得のいくものができないうちに、提出期限があと3日に迫った。

 その日も学校にひとりで居残って作業に没頭したけれど、なかなか満足な結果は得られない。
「うー」と頭を抱えていると、学長のマダム・デュボアがやってきた。

「あら、まだ残っていたの? 薫」
「はい、マダム。それが……なかなか思うような香りにならないんです。何か足りないのはわかるのですが、それがなんなのか……」
 
 マダムは後ろからわたしの両肩に手をおいてマッサージをはじめた。
「リラックスも大事よ。あまり根をつめていると、香りが窮屈になってしまうわ」

 そのとき、今まで嗅いだ覚えのない香りがつんと鼻孔を刺激した。
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