パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 わたしたちがじゃれ合う様子を見て、アデルはにんまり笑った。
「あんまりお邪魔したら悪いから、わたし帰るね」

「ごめん。今度ランチおごるから」
「オッケー。普段は行けないような高い店探しとく」
 じゃあね、と言って、アデルは手を振って去っていった。

「ではマダム。無理を言って申し訳ありませんが、よろしくお願いします」
 ルイはマダムに頭を下げた。
「お安い御用よ」
 マダムはウインクで答えた。

「マダムと知り合いだって言ってたよね、そう言えば」
「ああ、言ってなかったっけ。彼女は昔、私がまだ子供のころだが『アンジュ・ルグラン』にいたんだよ。主任パフューマーとしてね」
「それは初耳。で、何をお願いしたの?」

 ルイはわたしにちらっと視線を向けた。

「後でわかるよ」
 そう一言、思わせぶりに言って、ルイは車のドアに手をかけた。

「えー、気になる。知りたい」

 助手席から顔だけ突っこむと、ルイにおでこをツンと突かれた。
「薫も少しは我慢というものを覚えろ」
 
 もう、相変わらず、すぐ子供扱いするし。

 わたしがほっぺたを膨らませていると、
「ほら、乗って。あまり時間がない」と急かされた。
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