パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
「どこに行くの?」
「父が薫を連れて会社に来いと言ってきた」
「えっ? お父様が?」

 どういう風の吹き回しだろう?
 ずっと、わたしの存在を無視し続けているのに。

 ーー日本から来た小娘か。私は認めていないからな。

 オルレアンの病院で会ったときに、彼が言い放った言葉と、あの冷ややかな眼差しを思い出す。
「なんだろう……話って」

 わたしの表情や口調から不安を読み取ったんだろう。
 ルイは空いている手でわたしの手を握った。

「心配することはない。たとえ何があっても、私が薫を手離すわけがないだろう?」
「それはわかってるけど…………」

 そのまま、うつむいて顔を上げないわたしを気にかけたルイは、いったん路肩に車を停めた。
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