パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 もう、小娘、小娘って。

 この、前時代の遺物!
 家父長制の権化め!!
 ほんっとに頭来る!!!

 ルイはゆっくりとした動作で、胸ポケットから小瓶を取りだした。
 それからムエットの束も。

「父上もこの香りを嗅げば、薫がどれほど貴重な原石であるか、おわかりになるはずです」
「あ、それ、わたしの……卒制」
 ああ、それを持ってくるために学校に来ていたのか。
 でも、この石頭に嗅がせても意味ないように思うけど。

「はっ、そんなことか。バカバカしい。半人前の人間が作った香水なんか――」
 そう来ると思った。

 あくまで、真面目に取り合おうとしないジャンの声が、高らかに響くノックの音で中断された。
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