パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 ルイから香水を手渡されると、マダム自らムエットにたらし、ジャンに渡した。

「ほら、嗅いでごらんなさい。それとも、わたくしを信用できないってことかしら」
「いや、そういうわけでは……」

 ジャンはまだ疑っているようだった。
 半信半疑の表情で、マダムからムエットを受け取った。

 ムエットを鼻に近づけ、そして……
 目つきが変わった。

「このパルファン、本当にこいつが作ったのか?」
「ね、すごいでしょう」
 
 ジャンは少しの間、思案していた。
 そして踵を返すと、デスクに置かれた電話に手をかけた。

「わたしだ。イタリア便はキャンセルしてくれ。ビアンキへの連絡も頼む。ああ、急病とでもなんとでも言っておけ。予定が狂った。改めて戦略を立て直すことにした」
 
 ジャンは、ルイに尋ねた。
「工場のほうはまだ押さえているな」
「はい。まだそのままです」
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