パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 マダムは満面に笑みを湛えて、ジャンを見た。
「ずいぶん聞き分けがよくなって。あなたも年を取ったってことかしら」
「君の顔を立てたまでだよ。テレーズ」

 ジャンとマダムの親しげな会話を小耳にはさみながら、わたしたちはジャンの部屋を後にした。

***

「マダム・デュボアはね。父の幼なじみで初恋の相手なんだ。だから頭が上がらない」
「あー、そうなんだ」
「それで援軍をお願いしたんだよ。彼女は父の〝アキレス腱〟だからな」
「うん。お父様のマダムに対する態度、全然違ってて、ちょっと笑えた」

 ルイはそうだったな、と言って少し笑ってから、真面目な口調になった。
「あと、これは会社の極秘事項なんだが」
「極秘って?」
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