パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 周りは整った。
 あとは中身を作るだけ。

 まずはイメージを固めるために、ノートとにらめっこだ。
 〝雪〟はこの間の卒制をベースに、初春の花である〝蝋梅(ろうばい)〟をメインにして、さらにトップにユズを加えて日本色を前面に出す。

 逆に〝花〝のメインノートには王道の香りともいえる薔薇を用いて華やかな香りを意識。
 トップはベリー系、ラストノートはミルラにして……
 そこまでは割とすんなりとまとまった。

 一番苦労したのは、夜に纏う香りである〝月〟。
 西洋とは一味違う、日本の官能性をどう表現すればいいか。
 
 アイデアに詰まったときは、もうネットに頼るしかない。
 わたしは一晩かけて、日本の古典を調べまくった。
 そして、これだ、という逸話に出会った。

 それは小野小町の『百夜(ももよ)通い伝説』だ。
< 228 / 245 >

この作品をシェア

pagetop