パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 絶世の美女、小野小町に懸想した深草少将。

 小町は彼の真心を見極めるため、「百夜、一日も休まずにわたしのもとを訪ねたら、百夜目にあなたのものになります」と告げる。

 その言葉に従い、少将は都から郊外に住む小町のもとに、毎夜、毎夜通い続けた。

 頑なだった小町の心も次第に溶けてゆき……いつしか少将の訪れを心待ちにするようになった。

 けれど、九十九日目、あと一日で満願成就というところで、少将は命を落としてしまう……
 
 恋する人がすぐそばにいるのに耐え忍ぶ。
 内には互いに燃え(たぎ)る熱情を抱えながら。
 
 これぞ、日本の恋だと思った。
 そんな表裏一体の官能を描き出せれば……

 それを描き出せる香りを持つ花は、ひとつしかない。

 昼間は清楚な香りなのに、夜になると香りが悩ましげなものに変化するという月下香(チューベローズ)で決まり。

 そこに日本的な香りを合わせよう。
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