パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
「ですよねーーー。そんな、とっくの昔に死んでる曽祖父(ひいじい)様同士の口約束なんて、従うことないと思いますけど」
 
 ほんと、ほんと。
 まったく遠慮はいらないから、早くきっぱり断って。
 今回はご縁がなかったとかなんとか。

 ところが、振り返った彼は、とんでもないことを言いだした。
 
「でも、薫と会ってみて、気が変わったよ」

 か、かおるー?
 いきなり呼び捨て?

「ただ親の言いなりになっているような、大人しくてつまらない女だったら、さっさと席を立つつもりだったが……」

 彼はゆっくりした歩調で一歩、また一歩と間合いを狭めてくる。
 それにつれて、後ずさるわたし。

 とうとう反対側の欄干まで追い詰められた。

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